披露宴に訪問着を着て行きたいけれど、マナー違反になるのではないかと迷っている人は多いでしょう。そこでこの記事では、訪問着に関する基礎知識、披露宴に訪問着を着て行く場合の注意点についてご紹介します。披露宴にふさわしい服装について理解しておけば、当日は披露宴会場に品よく華をそえることができるでしょう。
訪問着について詳しくなろう
訪問着とは
訪問着とは、黒留袖、色留袖につぐ準礼装であり、女性用の着物のひとつです。留袖が既婚女性限定の着物であるのに対し、訪問着は既婚・未婚を問わずに着用できます。
外見的な特徴としては、上前～下前のあたりまで柄が続いて入っており、胸や袖の裁ちめの部分も流れるように柄がわたっているのが特徴的です。
胸の部分を見てみると、訪問着には上記のように柄が入っていますが、留袖には柄がありません。そのため、訪問着は会食などでテーブル席についた際にも、同席している人には柄がみえるため、より華やかな印象を残すことができます。
訪問着の歴史、起源
着物が当たり前のように着こなされていた鎌倉時代や安土桃山時代には、小袖と呼ばれる現在の着物の原型となったものが常用されていました。
それ以降、正装である留袖、普段着の小紋（小さな柄の入った着物）、色留袖など、さまざまな着物が女性を着飾ってきました。
ところが、大正時代になると、着物が普段着として着られていた時代が終わりを迎えようとします。
着物から洋服に切り替える日本人女性が増えてきた大正時代に、洋服のビジティング・ドレス（よそゆきのドレス）に代わる和装を……という背景で生まれたのが訪問着なのです。
訪問着の格
着物の格は、普段着物を着なれない人にとって、見わけがつきにくいものです。しかし、わかる人には見れば一発で見抜かれてしまうため、着物の格を分かったうえで着こなすことをおすすめします。
格式で順序づけるなら、
1番目は黒留袖、
2番目は色留袖、
3番目にようやく訪問着、
4番目に付け下げと並びます。
特に黒留袖は格式が高く、女性にとって最高の礼装ですが、訪問着は略式の礼装のため、留袖よりも着用できるシーンが多く、バリエーションも豊かです。
訪問着を着るシーン
訪問着は、よそゆきのドレス感覚で着用するものなので、改まったフォーマルな場から、格式張らない場にも着て行くことができます。
【フォーマルな場の例】
知人や友人の結婚式や披露宴、卒業式、入学式など。ただし、結婚式や披露宴の場合は親族（自分の子どもや兄弟・姉妹）として参列するとき、訪問着では少し格が足りないため、訪問着よりも留袖のほうが望ましいでしょう。
【インフォーマルな場の例】
お茶会、琴・華道などの習い事、歌舞伎等の観劇など「和」を連想させるおけいこ事の場合、訪問着が非常にきれいに映えます。また、少し改まったホームパーティーや、子どもや孫の発表会などにも訪問着がマッチするでしょう。
披露宴に訪問着を着ていくときの注意点
色や柄で季節に合った着こなしを心掛ける
披露宴で訪問着を着用するなら、披露宴が行われる季節に合った柄かどうかを確認しましょう。日本は特に、四季に配慮した柄選びもマナーのうちという習慣があります。そのため、冬季に桜、夏季に梅や椿など、季節にそぐわない柄を選んでしまうと、“粋”を感じられなくなってしまします。せっかく着るなら、披露宴が催される季節にあった柄を選び、粋に着こなしましょう。
新婦に配慮した色使いにする
留袖はハッキリとした色使いで、目立ちやすいデザインのものもあります。一方で訪問着は留袖よりも色地がやわらかく、ふんわりとした印象に仕上がるという特徴があります。花嫁が一番の主役である披露宴では、訪問着のふんわりとした色使いは非常に良識的で、マナーを理解していることがよくわかります。
しかし、ドレスの場合と同様、披露宴当日、「白」は花嫁だけに許される色ですから、白地の訪問着は避けたほうが無難です。また、黒地の訪問着も、遠くから見ると黒留袖と類似していることから、親族と勘違いされやすいため、避けた方がよいでしょう。
年齢に応じた柄選びで品よく着こなす
披露宴にはさまざまな年齢層の人が参列するため、なかにはあなた以外にも訪問着で参列する人もいるかもしれません。このように、同じ披露宴会場に訪問着を着用する人が複数いる場合、気を付けたいのは年齢に応じた柄ゆきかどうかという点です。
20代後半～
30代くらいの年代の場合は、訪問着全体に柄ゆきのあるタイプであれば、より華やかさを演出できます。
40代以降の場合、あまりにも柄が全体的にわたっていると、少し派手すぎる印象を与えてしまう可能性があります。
そのため、全体的ではなく、裾のほうに柄がわたっているもののほうが、落ち着いた印象を与え、年齢に応じた貫禄や気品を感じさせるため、おすすめです。
立場によって着物を変えよう！
披露宴に訪問着を着て行く場合、「自分がどんな立場で参列するのか」という点を一番に考える必要があります。親族の場合は前述したように留袖のほうが望ましいでしょう。しかし、親戚（いとこ、甥、姪など）や、友人の披露宴なら訪問着での参列はまったく問題ありません。
また、本当に付き合い程度の職場の人の披露宴なら、訪問着は少し「張り切りすぎ」な印象も与えてしまうかもしれません。新郎新婦との間柄を考えて、また周囲の人がどのような服装で参列しようとしているのか、可能であれば事前に情報をある程度集めたうえで、訪問着を着用するかどうかを決めることをおすすめします。
まとめ
訪問着は、洋服でいえば「よそゆき用のドレス」と同じような格になります。留袖よりは格下ですが、付け下げよりは格上であり、親戚や友人、知人の披露宴であれば問題なく着用できます。
ただし、披露宴の主役である花嫁よりも派手な色や、ウエディング・ドレスの白と同じような色合いになる白っぽい色地や、親族の黒留袖を見間違う可能性のある黒地の訪問着は避けたほうが無難です。さらに年齢や季節を考えた柄ゆきの訪問着であれば、披露宴会場でも品よく華をそえることができるでしょう。
